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日本は借金大国なのか? [情報]



日本国債格付け、ムーディーズが引き下げへ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110531-00000584-yom-bus_all


先日このようなニュースが入ってきた。
このニュースに関連して気になる話題がある。



それは日本は借金大国なのかだ。
ちなみに、この問いの答えはイエスである。
残念ながら、日本は900兆円もの借金のあるれっきとした借金大国だ。



だが、中には日本が借金大国であるのは間違いであり、でたらめだと言う意見が見られる。
そういった人たちの意見は「日本の借金は国民の資産である」、「国債はほぼ100%が円建てなので、いざとなればお札を刷れば良い」、「日本国債の金利は低いままなので、まだまだ信用されている」というものである。




これは果たして真実なのだろうか。
詳しく説明されると何となくそんな気がしてきてしまう。



だが、実はこれは明らかなごまかしなのだ。
まず、普通に考えれば分かるかと思うが「借金は資産である」という考え方。


確かに会計上、借金は資産である。
だが、一方で借金は負債でもある。
なので、期日がくれば当然返済しなくてはいけない。



資産の観点から見れば多くのものを持っているかのように感じるかもしれないが、それはあくまで張りぼて。自分の物ではないのだ。


大体、「日本の借金は国民の資産」というのも正確ではない。
日本の国債を買い付けているのは銀行だからだ。
銀行はゼロに近い金利で国民からお金を借り、それを国債などで運用している。
このとき、国に金を貸しているのは誰か?
国民ではなく、銀行だ。
国民は見返りをほとんど受けない。
(銀行預金の金利がゼロに近いので。)
国民の資産に組み入れるのは、預金残高とその金利であり、国債の額ではない。



それに、国と国民を混同してはいけない。
「日本は借金大国である」という時、それは日本という国の話をしている。
誰も「日本国民は多額の借金を抱えている」とは言っていない。
なので、借金でまみれているのは国だ。
そんな国の中でも裕福な国民はたくさんいる。


これはちょうど会社がつぶれると社員は路頭に迷うが、
会社の借金を肩代わりする必要はないのに似ている。
借金しているのは会社。社員ではないというわけだ。



次に「日本の借金はほぼ100%が円建てなので、いざとなれば円を刷れば良い」とする意見だが、これはちょっと短絡的すぎる。



円を刷れば、国の借金を解消することは出来る。
しかし、ほぼ確実に物価があがる。


なぜか。
それは通貨の価値が下がるからだ。


分かりやすいように話を凄く単純にすると、物の価値というのはその物の量によって決まると
考えて欲しい。量が少なければ希少価値が出て高価になり、多ければ低価になる。
そうすると、物と同様に、通貨の流通量が2倍になれば、通貨の価値は2分の1になる。
それだけ量が増えたからだ。
そして、通貨を刷るというのは通貨の量を増やすという事に他ならない。


つまりお金を増やしても、実質的には何も変わらないということだ。
お金を刷ればお金が増えるなんていう、そんなうまい話は無いとも言える。


また、通貨の量を増やして通貨の価値が下がると、それに反応して通貨の信用が落ちる。
また、企業の国際取引はドル建てが中心なので、対ドルで円安が進行する。
すると、どうなるか。


まず、日本株を円建てで購入していた海外投資家が軒並み市場から逃げる。
それを受けて株式が暴落し、日本は不況になる。
不況になるとよりいっそう通貨の信用が落ち、悪循環に歯止めがかからなくなる。


企業はというと、不況下の日本で活動するよりも
海外で活動するほうが効率が良いので海外で何事も完結していこうとする。
輸出産業に関しては円安の恩恵を多少受けるかもしれないが、
それもどうなるか分からない。
輸入している原材料や部品が多いと、
販売量を上回るコスト高に陥る可能性もあるからだ。



と、これはあくまで想像であるが、確かに通貨を発行すれば、
借金の絶対額自体は増えないので借金を返すことはできる。
しかし、その代わりに国民の生活と日本の経済、信用はがたおちになり、
混乱することだけは間違いない。
これでは本末転倒であることは言うまでもない。


まあ、しかし、これも当然だ。
そんなずる賢い方法で借金を返済するような国、誰が信用するというのか。
文字通り信用を失うことになりかねない。




さて最後の論点の「日本国債の金利は低いので、まだまだ信用されている」だが、これは論理が破綻している。日本の国債を購入しているのは誰だったか?それは国内の銀行である。(海外の投資家はほとんど見向きもしていないの実情だ。)


じゃあ、この意見で言っている信用とは何なのか。
国内の銀行による信用?
それを国際的な信用と混同するかのような言い方をするのは明らかにおかしい。


実際、外国人投資家のほとんどは日本国債に投資していない。
「外国人投資家にとって日本国債は魅力的ではない」からだ。
理由は簡単。金利が低すぎる。
いくら国債といえど、ある一定の金利がないのであれば、
わざわざ購入する価値はなく、他の物に投資したほうがマシだということだ。



つまり、日本の国債はもうずっと以前からその価値を認められていない。
国内の銀行がほぼ100%買っているというのは安心でも何でもない。
国内の銀行くらいしか買い手がいないだけ。
信用以前の問題だが、これが紛れもない事実だ。


さらに、この点がこの意見の一番の間違いなのだが、
「金利とリスクを混同」している。
金利とリスクは同一ではない。
リスクが高いと金利が高くなる傾向は確かにある。
しかし、それも絶対ではないし、金利が高いからといってリスクが高いとは限らない。
その逆に金利が低いからといって、リスクが低いとも限らない。
あくまでも目安でしかないということだ。




以上が簡単ではあるが、日本は借金国家なのかということに対する考察である。
今回、考察して感じた事。
それは「国の借金は国民の資産になる(ためになる)」という考え方は
非常に危険だという事である。


これではまるで国が借金をすればするほど、国民が豊かになるかのようだ。
つまりは国債を発行し、公共事業を実施すれば良いということなのか?
そんなことはあり得ない。
冷静に考え、常識の範囲で考えれば分かる。



金融は錬金術ではない。
無い物をあることにはできないし、
借金を魔法のように消す事もできない。


もし、負債が増えれば資産が殖えるということを本気で信じているのであれば、
どうだろう。
自己資本比率が1%の企業に全財産を投じてみては?
しかも、その企業の収益は毎年赤字というおまけ付きだ。



このアイデアが常軌を逸したものであることは、
賢明な読者の方なら説明しなくても分かるだろう。





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